THE ROOTS. 遊佐茂樹のルーツを探る。 | EXPLORE THE ROOTS OF YUZA SHIGEKI.

普段、家づくりに携わる中では垣間見ることのできない、
代表取締役 遊佐茂樹の根底にあるもの─。

THE ROOTS. #01

ジーンズとの出会いが、
すべてのはじまりだった。

はじめて古民家解体を手掛けてからもう20年余りの月日が経つが、その記憶は昨日のことのように鮮明に蘇るから不思議だ。一見古びた家屋には、飴色に染まった柱たちがどっしりと家を何十年も支え続けている。家人が代替わりしても寡黙に、ただひたすらに。その威風堂々とした佇まいは、当時、大工の経験がまだ浅かった株式会社遊佐建築代表取締役 遊佐茂樹にとって、感動とともに、どこか懐かしい気持ちが胸を走り抜けたという。

 その場所でたしかな時とともに育まれてきた歴史と、歴史に対する敬意の念。それは何も、家づくりに限ったことではない。身に纏う「洋服」、毎日を駆け抜ける相棒である「車」も同じ気持ちなのだという。洋服も車も大量生産、コストパフォーマンスが叫ばれる時代だが、古いモノに経緯を払い、丁寧に、長く愛でる。「便利で安いことは否定しません。でも、自分が好きなもの、長く一緒に過ごすものは別。ともに育っていく、いや、歴史あるモノに人は育てられていくと思うので」と話す。

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 遊佐茂樹の古いモノへの想いの原点は、中学生の頃。同級生にリーバイス501XXなどのヴィンテージのジーンズの存在を教えてもらった。量販店で大量生産されているリーバイスとは違った、味わいやこの世に一つしかない一点物の表情に一気に虜になった。また、自分のサイズや欲しい状態や年代・モデルの古着を探す楽しみと出合った時の得も言われぬ喜びも今までに感じたことのない感情だった。

高校時代は季節限定ではあったが、鳴子峡の駐車場や念願であった古着屋でのアルバイトなど、洋服を購入するためアルバイトに精を出したという。これまで20年以上収集してきたが、欲しいという友人にあげてしまい、手元にあるものは少なくなったそうだが、今も大切にとっているジーンズや古着がある。「探す楽しみ、大切にする。残す。リペアする。この楽しみの原点は古着にあるのかもしれません」と笑う。激しい主張はないが、こだわりが随所に垣間見れる現在のファッションの原点は、古着を愛でるという精神が根底にあるからなのかもしれない。

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THE ROOTS. #02 | 現代のエッセンスを加え、使いやすいものに。THE ROOTS. #02 | 現代のエッセンスを加え、使いやすいものに。

古いもの、新しいもの。
両方の良さを活かす。

鳴子の懐に抱かれた遊佐建築のある大崎市鳴子温泉は、車は一人一台と言っても過言ではない、生活の必需品。遊佐自身も免許を取ってから何台も車を乗り継いできたが、古民家を家主から譲ってもらうように、出会いはある日偶然に、いや必然のようにある一台の車が舞い込んだ。オールドランドクルーザーの象徴的存在として今なお人気の高いTOYOTA「ランドクルーザー40系」。その誕生は半世紀以上前の1960年のこと。最終モデルでもすでに30年の時を経過しており、憧れを抱きながらもなかなか手が出しにくい車でもあるのも事実。「今となっては市場に出回ることも少なくなってきた車。この車をいい形で残して、乗り継いでいきたい」。そんな気持ちで、友人から買い取ったという。

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すべて純正。昔のままがよいという人もいる一方、こう話す。「意外と思われるかもしれませんが昔ながらのいい部分、現代の便利な部分の“ハイブリッド”がいいと私は思うんです。伝統と新しい技術の融合こそが、歴史をつないでいくこれからのやり方。今、新しいと言われている技術もいずれ時を経過すれば、歴史となるはず。古いものだけに固執せずに新しい風を自分自身に取り込むことこそ、現代に生きる私たちにできることであり、快適な暮らしにつながっていくと思います」。

鹿児島にある頼れるランドクルーザー専門レストア店に車を預けること3年。40年以上も前の車はかつての風貌を残しながらも集中ロック付きのオートマ車へと生まれ変わった。納車はもちろん、家族で車の旅。鹿児島から宮城までの長旅も、この日を待ちわびていた彼にとっては、短く感じられたことだろう。

「うちは車屋さんではないけれど、家、仙台箪笥のレストア店という気概がある。レストアは回復、元に戻すというという意味ですが、そこに現代のエッセンスを加えて、使いやすいものにすることが仕事もプライベートも目標とする姿なのです」。

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